メディア担当の方
バナナは、エネルギーやミネラルの効率よい補給源として、よく運動前や運動中に慣習的に食べら
れる。しかし、バナナ摂取の運動への影響に関する知見には限りがある。我々は、運動前のバナナ摂
取による運動パフォーマンス向上効果と疲労軽減効果について明らかにするために、運動負荷試験を
バナナ摂取群・非摂取群の並行群間比較試験のデザインで行った。
被験者は 20 代の健常な日本人 20 名(各群 10 名ずつ)で、バナナ 234 g(約 2 本分相当)の摂取 3
時間後に、各被験者の最大酸素摂取量の 60%に相当する強度の運動負荷を、エルゴメーター(エアロ
バイク)にて 1 時間行った。その結果、バナナ摂取群は非摂取群に比べて運動量の指標となる Watt
数が増加しており、また運動中の主観的疲労度(RPE; 全体、下肢、呼吸)が低下していた。また、
客観的疲労度として疲労マーカーである血中 LDH 濃度の増加がバナナ摂取群では抑えられていた。ま
た、筋痙攣に関連のあることが知られている血中カリウム濃度の低下がバナナ摂取群では抑えられて
いた。
さらに、運動時によく食べられる米、パン、マルトデキストリン(炭水化物サプリメント)などの
他の食品摂取との比較検討をクロスオーバー試験で行った結果、同様に血中カリウム濃度の低下が他
の試験食品摂取群に比べてバナナ摂取群で抑えられていた。
これらのことから、バナナ摂取には、運動量の増加や疲労軽減効果があることが示唆された。したがっ
て運動時のバナナの摂取は、運動パフォーマンスの向上効果や怪我や故障の予防効果があることが期
待される。
バナナ摂取による運動パフォーマンス向上効果と疲労軽減効果に関する解析
【注釈】
スポーツの現場では、筋痙攣予防にバナナを摂取するよう心がけているが、理由はカリウムの含有量が高いからである。本研究ではカリウムにおいて、摂取群および非摂取群は運動により低下していたが、いずれも臨床上の正常範囲内で顕著な骨格筋症状は見られなかった。バナナのカリウムがスポーツ時に与える影響については、運動強度や栄養状態のコントロールなどによる更なる詳細な検証が必要である。
本研究ではLDHにおいて、摂取群は運動による上昇を抑制し、非摂取群は運動により上昇はしたが、臨床上の正常範囲内であった。バナナがスポーツ時の疲労に与える影響については、運動強度のコントロールなどによる更なる詳細な検証が必要である。
なお、摂取群におけるRPEは運動開始15分の時点の下肢の疲労感に対してのみ、非摂取群よりも有意な低値であった。
キーワード バナナ, 運動パフォーマンス , 向上効果 , 疲労軽減 , 解析
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