メディア担当の方
健康ラボ
2024.07.25
2024年のパリオリンピックが目前に迫り、世界中のスポーツファンが興奮しているのではないでしょうか。そんな中、スポーツ選手たちの最高のパフォーマンスをサポートするためには、適切な栄養摂取が欠かせません。今回は、時間栄養学の観点から、アスリートやスポーツを楽しむ皆さんに最適なバナナの取り方をご紹介します。栄養を効果的に摂取して、健康的なスポーツライフを送りましょう!
2024年のパリオリンピックは、7月26日から8月11日までの期間に開催されます。この大会では、世界中のトップアスリートたちが集まり、さまざまな競技で熱戦を繰り広げます。パリオリンピックでは、陸上競技、水泳、体操、サッカー、バスケットボールなど、多岐にわたる競技が予定されていますが、どの種目のスポーツにおいても適切な栄養素摂取と食事のタイミングが、選手たちのパフォーマンスに大きく影響を与えることが知られているのです[1][2]。
オリンピックには、陸上競技、水泳、体操、サッカー、バスケットボール、テニスなど、多種多様な競技がありますが[3]、選手たちにはそれぞれの競技に特化した力が求められます。例えば、陸上競技では瞬発力と持久力が重要であり、水泳では全身の持久力と筋力が必要です[4]。体操では柔軟性とバランス力が重要な役割を果たし、バスケットボールでは俊敏性と筋持久力が求められます。さらに競技によって、また各選手がどのような目的をもってトレーニングや試合に臨んでいる状態なのかによっても栄養素の取り方は変わってくるので、常に選手たちが最高のパフォーマンスを発揮するために、栄養補給のタイミングと内容を細かくリサーチしていくことが大切なのです[5]。
参考文献
[1] IOC. Paris 2024 Olympic Games. 2024. https://olympics.com/ja/paris-2024(参照:2024-7-17)
[2] Burke, L. M et al. Nutrition for Athletes. IOC Nutrition Guidelines . 2012. p.43-47.
[3] Jeukendrup, A. E & Gleeson, M. Sport Nutrition: An Introduction to Energy Production and Performance. Human Kinetics. 2010.
[4] Thomas, D. T, Erdman, K. A & Burke, L. M. Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics. Elsevier. 2016. 116. 3. p.501-528.
[5] Maughan, R. J& Shirreffs, S. M. Nutrition and Hydration Issues for Combat Sport Athletes. British Journal of Sports Medicine. BJSM. 2004.
時間栄養学とは、食事を取るタイミングが体のリズムや働きにどのような影響を与えるかを研究する学問です[6]。人間の体内時計は、24時間周期のリズムに従っており、この体のリズムに沿った食事を取ることで、代謝やエネルギー利用の効率が向上することがわかっています[7]。時間栄養学ではこの24時間周期のタイミングのほか、運動の前後というような動作的なタイミングの違いで栄養の吸収や代謝がどのように異なるかに注目しています。
特にアスリートにとっては、最適なタイミングで適切な栄養を取ることがパフォーマンス向上につながるので、食べる時間を考えることはとても大切です。例えば、運動の直前に炭水化物を摂取することで、エネルギーレベルを維持し、運動中のパフォーマンスを向上させることなどがわかっており[8]、運動前後の効率的な栄養補給について多くの研究が行われています。
参考文献
[6] Garaulet, M & Gómez-Abellán, P. Timing of food intake and obesity: a novel association. Physiology & Behavior. Elsevier. 2014. 134. p.44-50.
[7] Stellingwerff, T & Cox, G. R. Systematic review: Carbohydrate supplementation on exercise performance or capacity of varying durations. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism. NRC Research Press. 2014. 39. 9. p.998-1011.
[8] Cermak, N. M & van Loon, L. J. The use of carbohydrates during exercise as an ergogenic aid. Sports Medicine. 2013. 43. 11. p.1139-1155
バナナはエネルギー源として非常に優れている食品です。バナナは消化が良く、短時間でエネルギーに変換されるため、スポーツを行う前後に摂取することで即座にエネルギーを補給できます。よって、アスリートのエネルギー補給に最適といえるでしょう。また、バナナにはカリウムやビタミンB6が豊富に含まれています。カリウムは電解質バランスを維持し、ビタミンB6はエネルギー代謝を助けるなど、これらの栄養素は筋肉の機能をサポートし、運動中の筋肉のけいれんを防ぐ効果があることがわかっています[9][10]。
参考文献
[9] Rodriguez, N. R, DiMarco, N. M & Langley, S. Position of the American Dietetic Association, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and athletic performance. Journal of the American Dietetic Association. American Dietetic Association. 2019. 109. 3 p.509-527.
[10] McArdle, W. D, Katch, F. I & Katch, V. L. Exercise Physiology: Nutrition, Energy, and Human Performance. Lippincott Williams & Wilkins. 2014.
ではバナナを一体いつ取るのが良いのでしょうか。答えは、運動の前と後。さらにそれぞれの摂取タイミングによって効果が違っているのです。
バナナには消化吸収が早い炭水化物が含まれています。その炭水化物の中には複数の糖質が含まれており、それぞれ体内での吸収時間が異なります。つまり持続的なエネルギー供給が可能になり、運動中にエネルギー切れを防ぐ効果があるのです。
運動前にバナナを摂取することは、持久力を高めるエネルギー源となることがわかっています。よって、運動前にバナナを含む、炭水化物が豊富な食品を摂取すると、即座に利用できるエネルギーを作り出してくれるので、運動中のパフォーマンスを維持することができるのです[11]。運動前のタンパク質と炭水化物の組み合わせは、運動中にエネルギーレベルを長時間維持する[12]ほか、筋肉の分解を防ぐ効果もあるのでプロテインシェイクと一緒に取ってもよいでしょう。また、運動後もタンパク質と炭水化物を同時に摂取することで、体のリカバリーをサポートすることが報告されています[13]。バナナの炭水化物が筋肉に蓄えられたグリコーゲンを素早く補充し、運動後の疲労回復を助けてくれるのです。バナナと一緒に運動後にプロテインシェイクを摂取するのは、筋肉の修復と成長に役立つ可能性があるでしょう[14]。
参考文献
[11] Ivy, J. L et al. Muscle glycogen synthesis after exercise: effect of time of carbohydrate ingestion. Journal of Applied Physiology. American Physiological Society. 1988. 64. 4. p.1480-1485.
[12] Lotte Lina Kloby Nielsen, Max Lambert, Per Bendix Jeppesen Aarhus University. The Effect of Ingesting Carbohydrate and Proteins on Athletic Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Nutrients. MDPI. 2020. 20. 12. 5. p.1483.
[13] Hawley, J. A & Burke, L. M. Effect of meal frequency and timing on physical performance. British Journal of Nutrition. Cambridge University Press. 1997. 77 Suppl 1. p.S91-103.
[14] Phillips, S. M & Van Loon, L. J. Dietary protein for athletes: from requirements to optimum adaptation. Journal of Sports Sciences. Taylor & Francis. 2011. 29 Suppl 1. p.S29-38.
気軽にスポーツを楽しむ方も運動前にバナナを摂取することで、運動中のエネルギーレベルを維持しやすくなりますし、運動後にはバナナとヨーグルトを一緒に摂取することで、簡単に栄養バランスの取れたリカバリースナックを作ることができますよ! 筋肉の回復をサポートし、次回の運動に向けて体を整えることができますね[15]。ヨーグルトと一緒に摂取することで、乳酸菌(プロバイオティクス)の効果も期待でき、消化吸収を助けるだけでなく、免疫機能向上にも役立ちます[16]。
参考文献
[15] Helms, E. R et al. Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation. Journal of the International Society of Sports Nutrition. BMC. 2014. 12.11. p.20.
[16] 保井久子. 発酵乳プロバイオティクスの免疫調節機能およびウイルス感染症予防作用. ミルクサイエンス. 日本酪農科学会. 2010. 59. 3. p.255-263.
消化吸収の観点から運動の2時間前には食事を終えていることが望ましいのですが、食事から時間が空きすぎてしまった場合や小腹が空いたときには運動の30分前にバナナ1本を摂取することで、即座に利用可能なエネルギーを供給できるでしょう[17]。また、一掴みのナッツを運動前に炭水化物と組み合わせて摂取することで、運動中に持続的なエネルギーを供給し、エネルギーレベルを長時間維持するほか、筋肉の分解を防ぐ効果があることが報告されています[18]。水分を一緒に取ることも忘れずに。バナナと共に水分を摂取することで、消化を助け、運動中の脱水を防ぐことができます[19]。
参考文献
[17] Kerksick, C. M et al. International society of sports nutrition position stand: Nutrient timing. Journal of the International Society of Sports Nutrition. BMC. 2017. 14. 33.
[18] Burke, L. M & Deakin, V. Clinical Sports Nutrition. McGraw-Hill. 2015.
[19] Murray, R et al. Gastric emptying of ingested fluids and solids during submaximal exercise. Journal of Applied Physiology. American Physiological Society. 1989.
運動後30分以内にバナナを摂取することで、筋肉のグリコーゲンを迅速に補充し、回復を促進する効果があります[20]。これは、脂質やアミノ酸などの糖質以外からグルコースを合成する「糖新生」に伴う筋肉の分解を防ぐためです。また、炭水化物をしっかり取った後にタンパク質を摂取すると筋肉のリカバリーにも効果的。同時摂取でもよいでしょう。例えば、プロテインシェイクにバナナを組み合わせるとよいでしょう[21]。
水分補給も忘れずに行いましょう。運動後は汗をかくことで多くの水分を失いますので、バナナと共に十分な水分を摂取することが重要です[22]。
参考文献
[20] Hargreaves, M. Fluid and carbohydrate intake during exercise. Journal of Sports Sciences. Taylor & Francis. 1994.
[21] Burke, L. M & Deakin, V. Clinical Sports Nutrition. McGraw-Hill. 2015.
[22] Shirreffs, S. M & Sawka, M. N. Fluid and electrolyte needs for training, competition, and recovery. Journal of Sports Sciences. Taylor & Francis. 2011. p.S39-46.
バナナは、アスリートやスポーツ愛好者にとっても理想的な食材といえるでしょう。運動前後の適切なタイミングでバナナを摂取することで、パフォーマンスの向上とリカバリーの促進が期待できます。時間栄養学の視点を取り入れ、効果的な栄養管理を実践することで、より健康的なスポーツライフを送りましょう。
従来、「栄養学」といえば「何をどれだけ食べれば健康にいいのか」という観点から考えるのが一般的でした。そこに、新たに「時間」の観点を取り入れたのが「時間栄養学」。
「いつ、何を、どれだけ食べれば健康にいいのか」という考え方です。その際に欠かせないのが「体内時計」。
私たちは体内時計によって朝目覚め、夜寝る(睡眠)、体温や血圧、血糖値などのリズムを整えているのです。2017年のノーベル生理学・医学賞で体内時計が注目されました。肥満やがん、メタボリックシンドロームの治療や予防をはじめとした健康維持・増進に体内時計が重要な関わりを持っていることが明らかになってきています。こうした体内時計を考慮に入れた栄養学のことを時間栄養学と呼んでいます。
私は「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチすることを専門とし、科学的根拠を基にしたライフスタイルへのアドバイス、栄養指導、実体験を基にした食育活動や講演活動、料理教室も開催しています。また、自身の子育てのなかで得た知見や、クリニックでの栄養指導などを基にした実践的な疑問をテーマに自らの研究に活かしているとことです。いつ食べるかによって生活習慣がどう改善していくのか、企業様の健康経営、幼児教室や保育所、小学校、中学校、塾、学童などの子供たちの 食育を含めた生活改善のきっかけづくりについてお手つだいさせていただいております。
プロフィールを見る
従来、「栄養学」といえば「何をどれだけ食べれば健康にいいのか」という観点から考えるのが一般的でした。そこに、新たに「時間」の観点を取り入れたのが「時間栄養学」。
「いつ、何を、どれだけ食べれば健康にいいのか」という考え方です。その際に欠かせないのが「体内時計」。
私たちは体内時計によって朝目覚め、夜寝る(睡眠)、体温や血圧、血糖値などのリズムを整えているのです。2017年のノーベル生理学・医学賞で体内時計が注目されました。肥満やがん、メタボリックシンドロームの治療や予防をはじめとした健康維持・増進に体内時計が重要な関わりを持っていることが明らかになってきています。こうした体内時計を考慮に入れた栄養学のことを時間栄養学と呼んでいます。
私は「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチすることを専門とし、科学的根拠を基にしたライフスタイルへのアドバイス、栄養指導、実体験を基にした食育活動や講演活動、料理教室も開催しています。また、自身の子育てのなかで得た知見や、クリニックでの栄養指導などを基にした実践的な疑問をテーマに自らの研究に活かしているとことです。いつ食べるかによって生活習慣がどう改善していくのか、企業様の健康経営、幼児教室や保育所、小学校、中学校、塾、学童などの子供たちの 食育を含めた生活改善のきっかけづくりについてお手つだいさせていただいております。
プロフィールを見る