メディア担当の方
バナナはビタミンやミネラル、食物繊維など豊富に栄養素を含む果物で身体に良い食材としてよく取り上げられますが、目の健康をサポートする栄養素も豊富に含まれています。
今回はバナナに含まれている栄養素はどのような点で目に良いのかということに関して眼科医の観点から詳しく解説します。
目に良い食材といえば、ルテインが多く含まれているほうれん草やブロッコリーのような緑色の野菜、卵、ビタミンCが多いオレンジのような柑橘系のフルーツやキウイフルーツ、アントシアニンの多いブルーベリーやぶどう、ビタミンEが多いナッツ、オメガ3脂肪酸を含む魚などです。これらは抗酸化作用があって、身体にとっても大切な栄養素です。
目と食生活の関連性は多く報告がされており、例えばビタミンCを積極的に摂取することで白内障のリスクが低下する可能性があるなど、食生活を意識することでいくつかの眼病の発症を予防することが期待されています。[1]
バナナは甘いのでカロリーが高く血糖値が上がりやすい果物なのでは?と誤解されがちですが、1本あたりのカロリーは90キロカロリー程度と低カロリーで、血糖値が上がりにくい低GI食品です。
カリウムやマグネシウムなどの必須ミネラルや、エネルギー代謝に必要なビタミンB群、腸内環境を整えるために役立つ食物繊維やオリゴ糖などが多くまれています。また、バナナにはアミノ酸の一種であるトリプトファンも多く含まれています。トリプトファンはセロトニンに変化し良質な睡眠を促します。
バナナはこのような不足しがちなビタミン、ミネラル、食物繊維、アミノ酸を補い、健康をサポートします。
バナナに多く含まれるマグネシウムは必須ミネラルで、カルシウム、カリウム、ナトリウムに次いで体内で4番目に多いミネラルです。中でも特にマグネシウムの働きは重要とされています。マグネシウムは血流改善や酵素の働きを助けるミネラルで、特に神経系の機能に深く関わっています。そのため、目においても重要な役割を果たしています。
またマグネシウムは、血管を拡張させる働きがあります。血管拡張作用によって、視神経への血流が改善され、緑内障との関連が報告されています。
網膜細胞は、光による酸化ストレスを受けやすいことが知られています。マグネシウムは抗酸化作用を持つため、網膜の酸化を抑制し、保護する働きがあります。
バナナにはビタミンB群(B1、B2、B6、ナイアシン、葉酸)が含まれています。
ビタミンB群は代謝に関わるビタミンで、そのうちB6は神経伝達物質(ドーパミン)の合成を助けるため、視神経の働きを正常に保つ役割をしています。バナナはビタミンB6を多く含み、その補給源として適しています。
ほかにもビタミンB1は目の周辺の筋肉の疲れをやわらげる働きがあります。B2やナイアシンは緑内障にも良いという報告がされています。[2]
このように、ビタミンB群全体で目の働きを助けています。
バナナには食物繊維、オリゴ糖、レジスタントスターチといった腸に良い成分が豊富に含まれています。
これらは人の消化酵素では分解されずにそのまま大腸まで届いて、腸内にいる善玉菌のエサとなって、腸内環境を整えます。最近、腸内の環境は腸自体に影響があるだけでなく遠く離れた臓器にまで影響を及ぼすことが分かってきました。腸は免疫系が非常に活発な臓器で、腸内環境が悪くなると全身の免疫力の低下につながってさまざまな病気を引き起こします。眼についてもドライアイ、加齢黄斑変性症、ぶどう膜炎との関連が報告されています。
腸内環境の改善が、目の健康を守り、さまざまな眼疾患のリスクを減らす鍵になるかもしれません。
バナナには “幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの材料として必要なトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物のすべてを含んでいます。作られたセロトニンはメラトニンという眠りを促すホルモンを合成します。そのためバナナをとるとリラックス効果が高まり自律神経のバランスを整えるとされています。ストレスや睡眠不足は様々な眼病との関係があります。ストレスがかかると、交感神経の働きが強くなり、副交感神経の働きが弱くなります。自律神経が乱れると筋肉の緊張状態が続き、眼精疲労やまぶたの痙攣、ドライアイ、黄斑症、緑内障といった目の病気にも関与するとも報告されています。
セロトニンが合成されるのは午前中といわれていますから、朝食時にバナナを食べると効率良いでしょう。
国内の臨床試験では朝にバナナ食べる人は食べない人と比較して、食後に血糖値が急上昇する血糖値スパイクが有意に低いという報告がされています。[3]血糖値スパイクを防ぐことで、糖尿病予防にもつながり、ひいては目の健康維持にもつながります。朝のご飯やパンなどの朝食の代わりにバナナを1本食べることで効率的にエネルギーを補給しながら血糖値の上昇を抑えることができます。朝食時にヨーグルトを加えるとバナナに含まれる食物繊維がヨーグルトに含まれる乳酸菌のエサとなり、腸内環境が整って便通の改善につながります。また、乳製品との摂取でバナナではとりにくい「たんぱく質」も同時にとることができますね。朝のバナナ+ヨーグルトはおすすめです。ナッツも食物繊維が多く、バナナと一緒にとるとさらに血糖値の上昇を抑えることができます。お菓子やジュースなどの甘いものに比べると、バナナはカロリーが低く腹持ちも良いため、間食の代わりにバナナやナッツを取り入れるのがおすすめです。
バナナは、甘い果物ではありますが、実際は食物繊維が多く低GI値食品です。適切に摂取すれば糖尿病患者でも安心して食べることができます。1日1本を目安に、朝食時や他の食品と組み合わせて摂取することで、不足しがちな目の栄養素を補うことができます。ただし、腎機能に問題がある場合や過剰摂取には注意が必要です。持病を抱えている場合は、必ずかかりつけ医に相談の上、バナナの摂取量を決めてください。バナナを上手に取り入れて、健康的な食生活を送りましょう。
参考文献
[1]ビタミンC摂取と老人性白内障発症の関係について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト
[2]Flora Hui (2020). Improvement in inner retinal function in glaucoma with nicotinamide (vitamin B3) supplementation: A crossover randomized clinical trial, Clinical & Experimental Ophthalmology,48(7),903-914.
[3]Mitsuko Itoh(2023). The Effect of the Timing of Banana Intake on Postprandial Glucose Spike: Randomized Parallel-Group Comparison Study,Archives of Clinical Trials, 3(1)
2012年に金沢医科大学卒業後、岐阜県総合医療センターの研修を経て、岐阜大学病院眼科学教室に入局。
眼科全般の臨床経験を積んだ後、緑内障専門医として緑内障専門外来で経験を積む。
2021年に「真鍋眼科」を開院。緑内障をはじめとする目の予防医学にも力を入れ、眼病から目を守り、生涯患者さんに寄り添える医療を目指している。
プロフィールを見る
2012年に金沢医科大学卒業後、岐阜県総合医療センターの研修を経て、岐阜大学病院眼科学教室に入局。
眼科全般の臨床経験を積んだ後、緑内障専門医として緑内障専門外来で経験を積む。
2021年に「真鍋眼科」を開院。緑内障をはじめとする目の予防医学にも力を入れ、眼病から目を守り、生涯患者さんに寄り添える医療を目指している。
プロフィールを見る